倉山満『皇室論』。 明らかな事実誤認、支離滅裂、意味不明が多すぎる。 何回かにわけて主要な部分を取り上げる。 今回はその5回目。 倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【1】 倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【2】 倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【3】 倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【4】 まずは、全く細かいことなのだけど、 女系、双系についての説明部分を取り上げたい。 「仮に、『皇室を女系継承していこう』というなら、 具体的にいえば敬宮愛子内親王殿下に即位していただいた後は、 永遠に娘が天皇を継いでいくということです。 これと似て非なるもので、『娘でも息子でも長子相続』のように していくというのを『女系容認』と言います。 これは『女系天皇』ではありません。 男系でも女系でもない『雑系天皇』とでも 呼ぶしかない代物です」 ずっこける。 言葉が厳密でないから、読んでいるこちらが混乱する。 煙に巻くのが策略か? そうでないならただの無知。 「長子相続のようにしていく」と回りくどい言い方しているけど、 長子が継承するという意味なら、直系継承ではないか。 また、「娘でも息子でも云々」だけでなく、 「女系継承していこう」というのも女系容認ではないか。 性別は問わないというのは「雑系」ではなく「双系」。 古代はまさにそれで、双系的な社会だった。 なんでわざわざ「雑系」??? この一文の4ページあとに、「直系」という言葉が使われている。 なんだ、この言葉知っていたのか。 しかし倉山はこう書いている。 「直系を男系より重要視するということはありませんが、 直系も大事な原則の一つではあります。 男系の中で直系を重視する、ということであり、 この優先順位を逆にするとわけがわからなくなります」 再びずっこける。 ここ、なぜ直系より男系が優先されるのか 根拠も何も示されていない。 なぜ順位を逆にすると「わけがわからなくなる」のか、 理由も何も示されていない。 わけがわからんのは倉山のアタマだ。 倉山は勝手に直系より男系を優先させているが、 過去、直系が重視されていた例がある。 第26代継体天皇だ。 ご本人は男系といえども傍系中の傍系だったので、 仁賢天皇の皇女(つまり直系)である 手白香皇女(たしらかのひめみこ)と結婚。 それで即位を正当化した。 たとえ女性であっても、直系というのは ものすごく大きな権威だったのだ。 実際、継体天皇と豪族の娘との間にできた子、 安閑天皇・宣化天皇は一代限り、 手白香皇女との子は欽明天皇で、 それが今の天皇にまでつながっている。 手白香皇女の直系の血筋があったればこそ。 つまり欽明天皇の正統性を支えていたのは母親、女系の血統。 これが双系的な社会のあり方だ。 ところがシナ男系主義の脳みそを持つ人には、わからない。 倉山はせっかく継体天皇の例を出しているのに、これを 「女系で男系を補うことで血縁を近くした」と結論している。 あくまでも「男系絶対」、女は男の補完的存在としか考えられないから 認知が歪む。 自分に都合良く「雑系」などと片づけてしまうから、いつまで経っても 歴史の本質に辿り着けない。 まったく気の毒としか言いようがない。
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